『心理学的経営 個をあるがままに活かす』を聴いてみた
要約・感想
- 人事関連の仕事をされている方
- 自分で考える部下を育てたいと考えている管理職、経営者の方
作品情報
- タイトル:心理学的経営 個をあるがままに活かす
- 著者:大沢武志
- ジャンル:ビジネス・マネジメント・HRM
著者紹介:大沢武志
リクルートの創業メンバーのひとり。2012 年逝去。
組織人事担当の専務取締役としてリクルートを 30 年間支えた。グループ会社の人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ) にて、代表取締役を務めた。
適性検査「SPI」や組織開発「ROD」などの人材マネジメント商品を開発。『心理学的経営個をあるがままに生かす』を執筆。
オーディブル情報
- 通常再生時間:6時間41分
- 実際に聞いた再生時間:1時間55分(3.5倍速)
この記事では、私が上記の再生時間で聞き、理解した内容について感想を交えて綴っていきます。
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【オーディブルを試してみるにはこちらから!】本を読むにあたって:動機、何を学びたいか
前回に引き続き人材マネジメントの分野の勉強がしたいと考え、オーディブルで発行されている人材マネジメント分野の本は一通り聞いていこうと考えている。
前回紹介した「図解 人材マネジメント」でも紹介されていたリクルートの創業メンバーの一人である大沢氏の本が紹介されていたので聞いてみることにした。
そういえばリクルートの創業者である江副氏は東大の教育学部心理学科出身であったことを思い出した。
リクルートが優秀な人材を輩出し続けるのは、心理学に基づいた人事の仕組みを構築することができることも大きな要因の一つなんだと思う。
そのリクルートの創業メンバーの一人である大沢氏の代表的な著書のようなので人材マネジメントに関する学びを深めるとともに、心理学についても今後勉強してみたいと考え、この本を聞くことにした。
あらすじ・目次
オーディブルでのあらすじ
――私の考える心理学的経営とは、いわば経営リアリズムであって、まず、人間を人間としてあるがままにとらえるという現実認識が出発点なのである。――(序章より)
人間をあるがままにとらえる「個性化」と「活性化」のマネジメントとは。
江副浩正氏のもと、リクルートで30年にわたり組織における人間の「感情」や「個性」を深く追求した著者の、実務と研究に基づく全く新しい経営論。
1993年に刊行された本書は今なお、「人材経営」の原点として求める声が多い。
目次
- 序章:心理学的経営とは
- 第一章:モティベーション・マネジメント
- 第二章:小集団と人間関係
- 第三章:組織の活性化
- 第四章:リーダーシップと管理能力
- 第五章:適性と人事
- 第六章:個性化を求めて
- あとがき
要約
要点は以下の4つである。
人間は合理的な判断だけできるものでなく、様々な欲望を抱えており、感情の狭間で揺れ動き、非合理的な判断をすることもある。
心理学的経営は「個」に焦点をあて、人間の現実をありのままに受け入れ、「感情が行動に重大な影響を及ぼすことがある」としている。
仕事へのモチベーションは給与や条件面といった外的報酬だけでは維持できず、達成感や他者からの承認の実感によって高まるとしている。
人々を仕事に対して強くモチベートさせる要因は、給料や条件面ではなく、仕事そのものや仕事の過程といった、人間的要素に深く関わっている。
小集団の運営はイノベイティブな組織風土を醸成するカギとなる。
個々人のパーソナリティーを知ることは、多様な人材の確保やチームビルディングに役立つ。
心理学的経営とは?
企業経営において、タテマエとホンネ、合理的なシステムに対する非合理的な人間の行動、そして表のマネジメントと裏のマネジメントといった対比が存在する中で、
心理学的経営は人間をありのまま理解し受け入れることを重視している。
官僚組織は効率的なシステムを追求するが、人間の本質は感情や情緒に根ざしており、これらを無視することはできない。
心理学的経営では、感情が人間の行動に与える影響を重視し、人間の現実をありのままに受け入れる姿勢を持つ。
人間を純粋に合理的存在と見なすと不純物が生じるとされ、企業組織におけるルールはあくまで暗黙の合意に基づくものであると強調されている。
心理学的経営の視点は、現実の複雑さに向き合い、働く人々の自己実現と豊かな人生の実現を企業のゴールと位置づけているが、これらは容易に解決できない究極の課題である。
モチベーションの変化
従来の経営組織論では、「働く人が仕事を嫌がる」という前提で制度や規則が構築されていたが、現代の労働者は最低限の生活だけでなく、仕事を好み挑戦する欲求も持っている。
心理学者ハーズバーグの研究によれば、職務満足の要因は給与や条件ではなく、仕事そのものや成長感、承認欲求などの人間的要素に関連している。
目標が明確に意識されることも動機づけに影響し、「背伸びをすれば届きそうな難しい目標」がより大きな効果を生むことが示唆されている。
ただし、無理な目標設定は拒絶反応を引き起こす可能性があり、創造的破壊が生まれるケースもある。
リーダーシップ
優れたリーダーシップに共通した特性を見つけるのは難しく、パーソナリティとリーダーシップの関係も一概には言えない。
ただし、「管理職」の職務分類において、リーダーシップの二大機能は「要望性」と「共感性」とされ、さらに「通意性」と「信頼性」の四因子が重要であると位置づけられている。
【管理職の重要な4因子】
- 要望性(指示と能力発揮の引き出し)
- 共感性(気持ちの受容と支持)
- 通意性(意味のある情報提供)
- 信頼性(信頼の構築)
※太字がリーダーシップの二大機能
一方で、産業心理学者は「適性」に焦点を当てており、これは単純な物差しで判定できるものではない。
企業は多様なパーソナリティを受け入れつつも、バランスの取れた人材を採用する必要がある。
現行の日本の採用プロセスは面接試験を主体としており、企業が求めるパーソナリティ像が一律化しがちであるため、心理学の概念を取り入れたパーソナリティ・テストを活用して、多様な人材を採用することが重要であると提言されている。
最後に
心理学的経営にはありのままの人間に対する理解が必要としており、以下の説明がある。
「官僚組織などは、ムダを省いて最も効率的なシステムを志向する。こうした組織は、指示系統を単一にすることで、情報からできる限り余計なノイズを取り除こうとする。
しかし、そもそも人間の行動というのは、このノイズとしてのムダな情緒や感情を基底に持つところに、その本質がある。
人間は様々な欲望を抱え、感情の狭間で揺れ動く。心理学的経営においては、人間の現実をありのままに受け入れることを何よりも重視する。
そのうえで、「感情」こそ人間の行動に重大な影響を及ぼす要因だと考えるのだ」
本書のサブタイトルが「個をあるがままに活かす」となっているが、上記説明でもあるように人間とは非合理的な考えを持つものであり、それを理解することが「個をあるがままに活かした経営」ということになるのだと思う。
リクルート出身の方に話を聞くと、やはり社内で上司から
「それで君はどうしたいの?」
とことあるごとに聞かれ、そうすると嫌でも自分で考えて仕事するようになるらしい。
当時はかなりそれがつらかったが、今となってはそのおかげで力が付いた、という話を聞いた。
会社や上司が部下に指示したことだけをするのでは自分で考えて仕事をする能力は身につかないだろう。そうやって一人一人に仕事を自分事として考えさせ、個の才能を伸ばしていく。
そういった考え方が会社としてしみついているので、リクルート事件があって以降、大変な局面は当然あったのだろうが、今でも成長し続けるリクルートという会社があり続けられるのだと思う。
とても勉強になった一冊であった。
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